心臓手術を受けようとされる方へ

はじめに

私どもは内科の主治医よりあなたの心臓手術について相談を受け、外科の立場より手術は可能であると判断いたしました。

ご承知のように、心臓病にかぎらず病気の治療法は、薬を主体とする内科的治療法と、手術を行う外科的治療法に大きく分けられます。
そのどちらを選ぶほうがよいかという判断は、病気によって日常生活がどの程度障害されているか、手術をしない場合の今後の見通し、手術に伴う危険性の大きさなど、いろいろな条件を考慮して、内科医と外科医がよく検討した上で医学的な判断を致します。

しかし最終的に手術を受けるかどうかの決断は、どうしてもご本人あるいはご家族に行っていただくしかありません。そのためにあなたの病気の状態、ならびに手術の方法、必要性、危険性などについて、皆様がよく理解し、納得されるまで十分に説明致しますので、説明で分からない点があった場合は、ご遠慮なく何度でもお聞きになって下さい。

外科側からの説明は、担当の医師が上に述べた点を中心にできるだけ分かりやすく行うように心がけていますが、時間的な制約もあって十分にご理解いただけない点もあるかと思いこのホームページを作成しました。

これだけではまだ不十分とは思いますが、多少なりとも皆様のお役にたてるよう願っています。

責任者:長崎大学病院心臓血管外科
教授 江石清行

心臓病と心臓手術について

手術の対象となる心臓病について

心臓はわれわれが生きているかぎり、一刻の休みもなく働いて生命を維持している非常に重要な器官です。
正常の心臓の大きさは自分の握りこぶしぐらいで、左右の心房・心室がそれぞれ隣り合わせにくっついた4個の部屋からなっています。
心臓は1日に約10万回の拍動を繰り返して全身に血液を送り、細胞が生きていくのに必要な酸素や栄養分を体のすみずみまで供給しています。

心臓の病気には数多くの種類がありますが、大きく分けて、生まれつき心臓に異常がある先天性心疾患と、生まれた後に病気が生じた後天性心疾患の2種類があります。
部位的には、弁膜、心筋、冠状動脈など、心臓のあらゆる場所に病気が発生する可能性があります。
とくに発生頻度が高く、手術の対象となることが多い病気としては、先天性では心房や心室を仕切る壁に穴が開いている心房中隔欠損症・心室中隔欠損症や、肺に行く血流が少なく酸素の少ない血液が体を流れ、唇や指の爪にチアノーゼを生じるファロー四徴症等の複合心奇形などがあります。
また、後天性では、左右の心室の入口と出口にある4つの弁膜のいずれかに障害をきたす弁膜症、冠状動脈の狭窄や閉塞により生じる虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)や、心臓の腫瘍である粘液腫などが主なものです。

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心臓手術の方法

病気の種類に応じて心臓手術の方法も様々ですが、多くの場合は心臓の拍動を完全に停止させ、心臓の壁を切り開き心臓内部を直接目で見ながら異常な部分を修復したり、あるいは心臓表面の血管(冠状動脈)が狭窄・閉塞している場所の先に新しく血管をつないでバイパスを作成する方法がとられます。
このように、生きている人の心臓の動きを完全に止めて手術を行うことが、心臓手術と一般の手術との大きく異なる点です(心臓を止めて心臓内部の修復を行う手術のことを、専門用語で「開心術」といいます)。

しかし、心臓の拍動が止まることは、全身への新鮮な血液の供給が停止することであり、重要な臓器組織が生きていく上に必要な酸素や栄養分が補給されなくなります。
したがって、普通の状態で5分以上心臓が止まると、たとえその後で心臓が再び動き出しても脳などの重要臓器に重大な障害を残す可能性があります。
5分間という短い時間で複雑な心臓内の手術を終えることは不可能ですので、以前は心臓病を手術で治すことは不可能と考えられていました。
心臓を完全に止めてその内部にメスを入れる手術(開心術)が行えるようになったのは、昭和20年代の終わりころ、米国で人工心肺という画期的な装置が開発されて以来のことです。

人工心肺装置は心臓を止めている間、患者さんの心臓と肺の代わりをして全身の循環と呼吸を維持する装置で、人工肺と人工心という2つの部分からできています。
人工肺は患者さんの全身から心臓に戻ってくる静脈血(酸素が少ない血液)に再び酸素を与える役目をしており、また人工心は人工肺で酸素を与えられた血液(動脈血)を再び体内に送り込む役目をしています。
この装置は、このように患者さんの心臓を止めて手術を行っている間、全身に新鮮な動脈血を送り続けます。
心臓手術に欠くことのできない人工心肺装置もこの10年の間に飛躍的に改良が進み非常に安全なものになりました。

また心臓内部を扱う手術に際しては、心臓の中の血液の流れを止めて、心内部をすっかり空にしてしまう必要がありますが、そのような操作に伴う心臓の筋肉(心筋)の障害を防止するために、手術中に心臓全体を外から氷で冷却したり、冷やした心筋保護用の薬剤を心臓の血管(冠状動脈)内に注入したりして、血液や酸素の供給が止まった心筋を保護する有効な方法が開発され、このため手術に伴う心筋障害が大幅に減少しました。
また術中・術後にみられる心機能の低下や呼吸障害に対しても、新しい器械や薬剤などの開発により効果的な治療が行われるようになりました。

このような様々な分野にわたる医学の進歩により、長時間を要する複雑な心臓手術も安全に実施されるようになり、以前は手の施しようがなかった重症の心臓病に対しても優れた手術成績が得られるようになりました。

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心臓手術後の一般的な経過と、それに含まれる危険性

前項で述べたように、心臓手術が初めて行われてからのごく短い間に、この領域の進歩・発展には実にめざましいものがあり、現在では心臓手術は一般手術と同じくらい安全な手術になったといわれています。
しかし、本来手術というものは、いかに進歩しても常にある種の危険を伴うものです。

とりわけ心臓手術では、全身の循環をうけもつ大切な心臓にメスを入れるのですから、術後のわずかな変化でも生命の危険に直接つながる恐れがあります。術前から存在する心臓病そのものの影響や手術の影響などにより、手術直後からしばらくの間は患者さんにとって不安定で危険な状態が続き、この時期を無事乗り切れるかどうかが手術の結果を左右します。また術中から術後早期にかけての時期は感染、腎障害、脳障害などの合併症が起こりやすい時期でもあります。

生命の危険、および合併症発生の危険性が大きいと考えられる時期の長さは、病気の重さや手術の種類によって違いますが、普通は1週間前後です。
病状が安定するまでの期間、患者さんは手術室の隣にある集中治療室(ICU)または10階東病棟の中にある観察室(1067号室)にて治療を受けます。
ここでは経験をつんだ医師や看護師が、血圧、脈拍、呼吸、心電図モニター、尿量、出血量など、たえず変化する病状を注意深く観察し、病状の変化があればいつでも緊急の処置が行えるよう態勢を整えています。

観察室を出て一般の病室に移る時期になると、手術に伴う危険は一応遠ざかったと考えてよいのですが、それでも思いがけない異変が起こることがあります。
また元気に退院されても術後半年くらいはいろいろな合併症の発生に注意する必要があります。

私たちは手術後に予想されるあらゆる危険にいつでも対処できる体制で、最善の治療を行っていますが、全力をつくしてもなお生命をとりとめることができない場合もあります。
心臓手術によって健康を取り戻すには、このようないくつかの危険な関門を通り抜けなければなりません。


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